もうちょっと渡米直後の生活を綴ってみよう。
もし私がカリフォルニアだとかニューヨークだとかに行っていたら多分経験できなかった色々な事をこのアイダホの北、Lewistonで経験できた。一言でいうと、「何にもない」所だ。
周りを見渡すと昔の西部劇の舞台になるようなそんな所である。いかにも「アメリカ」だ。

私がこのLewistonに着いたのは夏だった。アイダホの夏は湿度はないが、とにかく熱い、暑いではなく、熱いのだ。28度は軽く超える。しかしエアコンがある家はほとんどない。寮にももちろんエアコンは入っていない。道路の表面にユラユラと蜃気楼がでるくらい熱い。


T-shirtを脱ぐときに耳タブの付け根が痛いのに気がついた、なんだろうと鏡でみてみたら、ん?切れている?暑さで乾燥して耳たぶが切れた!
そんな熱い(暑い)中、新入りの日本人学生の私達は歩いて買い物に出ることにした。というか歩くしか交通手段がないわけだ。私達の到着後に数名日本人が到着した。女子2名が加わった。C子ちゃんとN子ちゃんだ。
大学は夏休みだが、語学学校はクォーター制なので、学期の学期の間には1~2週間の休みはあるが、基本的には授業は年間通してある。ということはぜったいにこの語学学校に通っている学生がいるはずだ。しかしなぜか会わない。だから私達はなにもこの街の情報を得ることができないまま、取りあえず初日に行ったK-martとLucyが連れて行ってくれたBurger Kingの隣にあるスーパーマーケットに行って必要な物を買いに行くことにした。歩いて・・・
でも今回はちょっと頼りになる子がいた。C子ちゃんだ。ホームステイの経験もあり、なんていってもMy Typewriterを持ってきちゃうくらいの子だ。これで英語は大丈夫だ!私達にはC子ちゃんがいる!
洗濯物を入れるカゴ、シャワールームに持っていく入れ物、食べ物、今考えるとなんだかつまらないものだが、その時には「必要」だった物だった。
さて、どっちに向かって歩いたらいいのだろう?
ここで私達は大きなミスを犯してしまった!直にLucyが車で連れて行ってくれた道に向かって歩けばよかったのだが、ぶっと右の道の先をみるとスーパーみたいな建物が見えた。「こっちに行ってみよう」と真っすぐ行けば確実にAlbetsonがあるのに、その未知の建物につられて右に曲がって歩き出してしまったのだ。
あっ!やっぱりスーパーだ!Thrift Storeという看板があるじゃないか!こんなに近くにあるじゃないか!!!と喜んだのもつかの間、閉まっている。ただ閉店日とかじゃなく、開く気配がなく閉まっている。後で噂で聞いたのだが、どうやら税金を納めていなくて営業停止になっていたそうだ。

炎天下の中私達は地図もないのに5人の勘だけを頼って歩き始めた。暑すぎる日中に人影はない。音もない。日本ならさしずめ蝉の声でも聞こえてきそうだが、ここには蝉がいないようだ。気持ち的にはオアシスを求め砂漠を歩いているような感じだ。
どれくらい歩いただろか?20分?もっと?すると大きな通りにでた。するとPolar Bearというアイスクリームショップとその後ろに名前は忘れてしまったがBurger shopがあった!私達は取りあえず店に入った、そこでK-martにはどうやったら行けるか聞いたような気がする。私達の勘はなまじっか間違ってはいなかった。それからさらに1時間近く歩いたのではないだろうか?あったぁ~!K-mart!!!!
エアコンが効いていて涼しい!デカイ!デカイ!なんでも売っている(とその時は思った。)ショッピングカートもデカイ!・・・しかしこのデカイショッピングカートが後で仇となることをこの時点では知らなかった。
私達はそれぞれ必要な物を買いこんだ。ふっと見てみると、5人とも同じようなものを持っている。大きな洗濯カゴ、シャワーで使うバケツ(子供用のバケツ)スナック、文具、クリネックス・・・
会計をすませて大きなK-martのビニール袋をサンタクロースのように担ぎ・・・あっ!私達徒歩。それもかなりの距離・・・ショッピングカートに入れていた時は重さを全く気にすることなく、あれも、これもと買ってしまった!

この街には流しで走っているタクシーもなく、バスもなく、車なしではまず大変不自由な街であるということにまだ気がついていなかった。
歩く、ただひたすら歩く。K-martのビニール袋が腕に食い込んでくる。痛い!でも歩く。歩かないと寮に帰れない。もう会話もない、アジア人女子5人がデカイビニール袋を担いで蜃気楼が見える道路の脇を歩いている姿はちょっと異様である。でももう疲れたし、腕は痛いしとにかく寮に戻るために歩く。
するとAlbertsonのある交差点に着いた。でももう食料を調達する元気もないし、それよりなによりもうこれ以上荷物を増やしたくない!でもここまで来たら寮はもうすぐだ、車で5分位だったから・・・っていうか最初からこっちの道で来たらよかったじゃん!ここからK-martまで真っすぐ一本道だし。
さらに、そこから寮に向かう道の途中にコンビニのようなミニマートもある。
私達の選んだ道は何もないだけではなく、ものすごい遠回りだっただけだ。
私は決心した。そうだ、自転車を買おう!