老いた母に思う事(2)

何が忙しいというわけではないのだが、バタバタとしているうちに3週間が経ってしまった。時間があるようであまりないことに気が付いて、なんだかソワソワ。

母の住む2LKのマンションは、去年帰国した時に整理整頓をしたので、何がどこにあるかはすべて把握している。そして3ヶ月の滞在の間、2回ほどレンタカーを借りて、あとは車のない生活だったので、とにかく歩きまわり、ある程度の土地勘はついた。それが今回大変役に立っている。

さてさて、私が帰国したDay1 から今日現在も入院している母。私が帰国した時には、すでに入院17日目だったが、その時に母と比べると、別人のように元気である。

ちょうど良い感じに冷房の効いた病院内、栄養のバランスが考えられた食事が朝、昼、晩と、黙っていても配膳され、看護師さんが毎日の体調をチェックしてくれ、日に2回のリハビリあり、お風呂も介護してくれる人がいるので、安心して入ることが出来る。そしてなにより、みなさん優しく話しかけてくれる。

衣・食・住は日常生活をしていく上で、最も基本的な、そして必要な3要素である。これらは言うまでもなく、衣(服)は身を守り、食は生存していく上で必要な栄養を供給し、住(居)は安全と安心を与える。

私はここに「社(社交)」を入れたい。衣・食・住・社である。

うちの母の場合、食・社が思いっきり抜けちゃっていた。

「食」については、本当に自分でしっかりと3食食べるという習慣を守らないと、一人暮らしの高齢者は死に繋がってしまう。母は完全に栄養のバランスがみだれ、さらに自分のために食事の用意をする事をやめてしまい。冷凍食品やレトルト食品、また見守りサービスの一環でもある、週に2回配達されるお弁当すらも、「食欲がない」といって食べるのをやめてしまっていた。

いくらLineのビデオチャットで「少しでも食べなきゃだめだよ」と言っても、一緒に暮らしていないわけだから、言うだけに終わってしまう。

今回は風邪(?)からの体調不良で、食欲を落とし、後からわかった事だが、10日以上もまともにご飯を食べていない状態が続いていたようで、衰弱と極度の脱水症状で緊急入院となってしまった。自業自得と言ってしまえばそれまでだが、料理好きな私でも、自分だけのために、何かを作るというのはなかなかメンドクサイと思ってしまう。でもお腹が空くので、ここぞとばかりアメリカでは手に入りずらい食材を買って、日本に行ったらこれ作ろう!と保存しておいたレシピを見ながら、お一人様ご飯を用意する(だから痩せない)。

社(社交)については、母は人がいる場にたまたま居れば、気さくに会話をするから、結構社交的だと思われがちだが、カラオケに行ったり(多分カラオケ経験ゼロだと思う)、町の講習会や催し物に行ったりと、自ら社交の場に行くことはしない。もし行ったとしても、誰かから話しかけられない限り、誰ともかかわらずに目的だけ達成して帰ってくる感じだ。母は昔から人との関わりをメンドクサイと避けてきた。

そのくせ、「今日は誰とも話さなかった」と事ある毎に言う。自分で努力しないのに何を言っているのだと母の矛盾に腹が立つことさえある。母は何を求めているのだろう?と考えてしまう。

そんな母が入院して、「衣」はともかく、「食」が安定し、「住」も外の酷暑とは別世界の避暑地のような病院に入院し、すぐ手に届くところにナースコールのボタンがある安心した毎日がおくれ、毎日の生活の中に、看護師さん、リハビリの先生、介護士さん、そして同じ病室の方々と会話をし、笑うという「社(交)」の時間が出来たことで、見違えるほど、元気になってしまった(笑)。まぁ娘が近くに居るという安心感もあるのだろう。

近年の母は、時々認知症の渦にふっと入ってしまった時の、なんていうか、パッキングされたスーパーの魚の目のような、焦点がさだまらない・・・というかストンとどこかの空間に入ってしまったような目をすることがあった。でもここ数日の母の目には、しっかりと力がはいり、「普通」の母の目に戻っていた。

母に必要なのは、しっかりとした食生活、安心して生活できる場所、そして人とのふれあいなんだと確信した。

退院後の母の一人暮らしは、どう考えてもプラスにはならない。例え本人が「頑張ってみる」「出来る」といったとしても、実際に生活に戻った時に89歳になろうとしている母に出来ることは限られてきてしまう、というより出来なくなってきてしまったことが多すぎる。

主治医の先生からアドバイスを受け、妹と母のケアーマネージャーさんと色々と話し合い、高齢者介護施設の中でも、介護をそんなに必要としない、「サービス付き高齢者向け住宅」というのを探すことにした。

投稿者: love4legkids

渡米なんて憧れの世界だと、なぜかずっと思っていた。でも来ちゃった!スーツケース1つで渡米した私は今や日本にいた年月を越しワンコと旦那君と、カナダとの国境とメキシコの国境を季節のおいしいどころ取りで生活している元気なオバチャンです。

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